令和7年には団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者になり、その数は全人口の約18パーセントに上ります。また、2030年代には若年人口の急減が見込まれており、日本においては人口減少・少子高齢化が加速しています。 これらによる社会問題に対して、RISTEXではより広い観点から見直しを図るための取り組みを進める必要があると考え、人びとの生活の基盤として、互いの暮らしを支え合える自発的・機能的なコミュニティーや、自身の外にある環境(自然環境を含む)と互恵的に作用できるインフラの実現により、平時のみならず災害時にもしなやかに生き抜くことができる社会の構築を目指す新規研究開発領域を設定しました。 本領域では「人は『ケアし、ケアされる』弱い存在である」という相互依存的人間観に基づき、介護・育児などに限らず、自然に「他者や環境を気にかける」ことから生まれる行為や、その行為が立ち現れ得る状態を広く「ケア」と捉え、その価値を科学的に見いだし、ケアを社会の現場で実践する活動を対象とした、異分野連携・総合知によらなければ解決し難い研究開発プロジェクトを支援します。 | |
申請期限 | 2025年6月4日 |
対象地域 | 全国 |
対象団体 | 調査・研究、事業プロジェクト |
対象活動 | 研究開発要素①―1:ケア当事者等の分析によるケアとその価値の可視化 (テーマ例) ・日常生活におけるケアの可視化とその価値指標の構築 ・ケアの担い手・ケアの受け手双方の視点に基づくケアの構造化 ・ケアにおける無意識の身体性の解明 ・ケア労働におけるケアの担い手の不利益とその発生のメカニズム ・ヤングケアラーの介護経験とその後の人生への影響 ・「名もなき家事」等を含む広義のケア行為に要する時間対効果の調査分析 ・ケアの現場におけるナラティブデータ収集と分析 ・要介護者等、ケアの受け手となる場面の多い方が、他者に生きがいをもたらし、他者にとってケアの担い手になる事象とそのメカニズムの解明 ・ケアの受け手にとって安心できるケア・安心できないケアの明確化 (ケアの受け手から発せられる情報の可視化を含む) ・ケアの受け手の感情をケアの担い手がリアルタイムで理解し、ケアの受け手と円滑なコミュニケーションをサポートするシステム開発 ・ケアの受け手がニーズを発し、担い手がそれを受け止め自然に行動できる環境の構築 ・自然環境に向けた住民の感覚を高め、自然に配慮した行動を惹起するための地域デザイン ・気候変動等による外的環境の変化に適応した地域インフラのデザイン ・国内外のケアコミュニティの先進事例分析と多地域展開にあたっての示唆 研究開発要素①―2:歴史・社会・芸術・文化・教育等の視点からのケアとその価値の可視化 (テーマ例) ・「ケア」に関する国際条約、法、制度(男女共同参画、障害者関連、人権関連等)の国内適用状況の変遷とその効果の分析 ・歴史、社会、芸術、文化、教育等にみられるケアの実態とその価値の解明 ・公的制度化されたケア、公的制度化されていないケアの国際比較分析 ・ケア軽視・阻害がもたらす社会的損失との関連性の解明 ・自然環境に配慮した生活空間の互恵的な構築と維持というプロセスが、人間と環境双方に有益な価値をもたらすかどうかの検証 ・自然環境への畏敬感情とケアとの関連性解明 ・人類史・生命史からみた人間のケアの意義の解明 ・「弱さ」の自己表出が困難になっている要因の究明 ・自身をいたわるセルフケアの意義の究明 ・セルフケアやそれがもたらす自身の Well-being と他者へのケア志向との関連性解明 ・地域コミュニティ機能とケアの関連性解明 ・自立した「強い」個人を前提としない社会の形成可能性に関する研究 研究開発要素② 可視化されたケアの価値に基づく社会システムの実践 研究開発要素①で可視化されたケアの価値を踏まえた、相互依存的な人間観に基づいた社会システムの見直しの方向性や改善策を実社会の現場で実践し、検証・改善を行います(PoC:Proof of Concept)。これに加えて、ワークショップ・住民対話等の機会を通じて、研究開発プロジェクトの成果がもたらす「ケアが根づく社会」のあり方を問いながら、住民をはじめステークホルダーが徐々に主体的にその実践活動に携わる状況に繋げていく活動も実施します。 提案書には、プロジェクトの成果が波及し、ケアが根づく社会のビジョンとして、「提案者が着目するケアの価値がどのような形で人びとに根づき、その結果、社会がどのような状態になっていることが望ましいか」を明記していただきます。 (テーマ例): ・ケアを自発的に行うコミュニティを支える法・社会制度・経済システムの提言と実践 ・法・社会制度に依拠しない相互依存的かつ自発的なケアコミュニティの提言と実践 ・ケアが根づく社会に関する啓発・意識変容・普及・教育のためのプラットフォームの構築と実践 ・ケアが根づく社会を実現するための製品開発ポリシーとその実践 ・ケアが根づく中心社会への移行に向けた方法論の実践 ・ケアの担い手が軽視されない新たな持続的地域社会の実践 ・災害現場等を想定した、地域におけるインフォーマルケアの実践 ・ケアが根づく社会を実現するためのコミュニケーションの実践 ・多様性を受容するケアコミュニティの実践 ・ケアを考慮した労働を評価するシステムの実践 ・デジタルツイン環境下でのケアの実践 ・インフラの現状把握とメンテナンスの実践 |
助成金額 | 1 プロジェクトにつき 2,300 万円/年 程度上限 3件程度 原則 4 年半(最長 2030 年 3 月まで) |
問合わせ先 | 国立研究開発法人 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター 企画運営室 募集担当 |
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URL | https://www.jst.go.jp/pr/info/info1762/index.html |