塩資源として岩塩をもたず、また高湿多雨のため海水を天日で蒸発させて塩をつくることに適していない日本では、海水から安く良質な塩をつくる技術を確立させてきました。こうした技術をさらに改善、応用し、新規に開発することは国内塩産業の一層の発展に大きな役割を果たすと期待されます。そして、製塩のもととなる海には、さまざまな資源があり、その海水を利用し、守るための技術を開発することは持続可能な社会へ向けた礎となると考えます。 また、塩の人体での生理作用を理解することは健康的な生活を送るためのガイドとなります。同様に、塩の食品における働きを知ることは食品の加工・調理・保存法の向上につながります。こうした知識を増やすことで私たちの生活をより豊かにすることが可能となります。さらに、今まで塩の関与が知られていなかった領域にも研究の幅を広げることにより、塩の新たな価値を見出すことも期待します。ソルト・サイエンス研究財団は、これらの研究の助成を行うことにより、日本の塩産業の振興と基盤の強化に寄与し、広く日本経済・文化の進展と国民生活の充実に資していきたいと考えています。 | |
申請期限 | 2023年 11月 25日 |
対象地域 | 全国 |
対象団体 | ・日本国内の大学、公的研究機関等で研究に携わる人(学生・研究生等を除きます) 特に、若手研究者、女性研究者の積極的な応募を期待します。 ・財団からの助成回数に制限はありません。過去の助成回数にかかわらず応募が可能です。 ・一般公募研究は年度毎に募集・選考を行いますが、3年間まで連続して助成を受けることができます。 (2021年度から3年間連続して一般公募研究助成を受けた方は、今回一般公募研究への応募はできません。) ・同一組織(大学院・学部・学科等)からの複数の申請は可能ですが、同一研究室からの申請は分野に関わらずに 1件に限ります |
対象活動 | 2024年度一般公募研究助成対象研究領域 理工学分野 (公募趣旨) 製塩やそれに関わる技術を発展させる研究、海水の資源を利用する研究、持続的な環境保全に繋がる研究、塩類の新たな価値を見出す研究が望まれます。 (対象研究課題) 製塩: ・製塩関連技術(海水ろ過、電気透析、晶析など)の改善・応用・新規開発 ・塩製品の分析・保存技術 ・防食技術 海水資源:海水成分の分析・分離回収・利用 環境: ・海水の環境汚染物質の分析・影響評価・除去 ・塩害対策 新用途:塩類の用途探索・その利用 分野共通:塩類の摂取量を評価する方法 (例;摂取量のモニタリングデバイスの開発) 医学分野 (公募趣旨) 長寿時代でのQuality of Life を高めるための塩類の健康に及ぼす影響・役割を明らかにする研究、塩類の生理作用を明らかにする研究が望まれます。 (対象研究課題) 健康:塩類の摂取量の変化が人体に及ぼす影響 生理的機序:塩類の生理的役割・その調節機構と病態 分野共通:塩類の摂取量を評価する方法 (例;摂取量の簡易評価法の開発) 食品科学分野 (公募趣旨) 加工・調理・保存において不可欠な素材である塩類の働きを知る研究、持続的に健康で豊かな食生活を送る上で役立つ塩類の作用を明らかにする研究が望まれます。 (対象研究課題) 調理・加工・保存:食品の加工・調理・保存での塩類の影響 栄養・味覚: ・塩類摂取の調査 ・塩類の栄養生理的働き ・味覚・嗜好での塩類の作用 食材:塩水利用の作物栽培 分野共通:塩類の摂取量を評価する方法 (例;食品からの摂取量の簡便な推計法の開発) 過去に採択された助成研究課題は財団ウェブサイトを参照してください ( 「過去の研究助成実績等」、「研究報告書」から課題がご覧になれます ) 別紙2 2024年度プロジェクト研究課題(食品科学分野) プロジェクト研究課題名: 食資源開発と環境負荷低減に資する塩の利活用 温室効果ガス排出増加による地球温暖化にともなう気候変動は、自然災害の発生に影響を及ぼす。諸事項は生態系の変化,農作物の不良,農地の減少等につながり、食料生産能力に影響する。これらの危機的状況を解決する一助として以下の3つのサブテーマの研究を募集する。 (サブテーマ1) 食料生産に及ぼす塩の効果とその分子機構の解明 (サブテーマ2) 最新技術を用いた新規食品・低利用食資源の開発に関わる塩の役割 (サブテーマ3) 食品加工・保存における温室効果ガス削減につながる塩の利活用 サブテーマ1は、食料生産に及ぼす塩効果とその分子機構の解明である。トマトを食塩水栽培すると糖類やビタミンCが蓄積し、商品価値の高い作物が得られることが知られている。しかし、塩水を活用する作物栽培における食味や機能性成分の変化に関わる分子機構の全容は未解明である。海水を使ったトマトなどの野菜の栽培も実際に試みられており、塩水や海水を活用する作物栽培に関する科学的知見は、栽培可能範囲を広げ、食資源の確保につながる。加えて、育種や海藻・陸上養殖など食料生産に関わる塩水の効果についての研究も興味深い。食塩以外のにがりなどの塩類が、食料生産に及ぼす影響を検討する研究も期待したい。 サブテーマ2は、最新技術を用いた新規食品あるいは低利用食資源の開発に関わる塩の役割である。最新テクノロジーを駆使した新しい食品の開発が注目されている。そうしたフードテックの例として、豆類やキノコ類を原料とする植物肉や培養肉が挙げられる。これらの新食品は肉と類似の食感を付与させるテクノロジーであり、産学連携で実施されている。食肉のおいしさは、食感と風味であって、食肉の風味には血液成分、脂肪、遊離アミノ酸、NaやKなどのミネラルなどが関与する。植物肉成型時の添加物や培養液の組成により植物肉や培養肉自体の風味が変化することが予想される。食塩をはじめとするミネラルが植物肉や培養肉の食感や風味の向上に及ぼす影響を検証することが望まれる。一方、害獣として捕獲されたシカやイノシシなどのジビエや未来のたんぱく源としての昆虫、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維が多い粟・黍などの雑穀や玄米は健康食として注目されているが、その消費は低迷している。低利用食資源を有効活用するために食塩が果たす役割を検討する研究も含む。 サブテーマ3として、食品加工・保存における温室効果ガス削減につながる食塩の利活用が注目される。 本財団の助成研究にも温室効果ガス排出量削減につながるものが散見される。コラゲナーゼやキシラナーゼへの好塩性付与の研究は、醤油粕などの高塩性産業廃棄物の分解への応用に資する。微粒子化したおからを添加したゲル物性と食味に及ぼす食塩の効果に関する研究は、フードロスの低減と新規食品の開発につながる。不凍たんぱく質の氷結晶再結晶化抑制に及ぼす添加塩の影響に関する研究は、エネルギー消費の多いディープフリーザー依存からの脱却につながる。食塩が介在することで、フードロスやエネルギー消費の削減につながるであろう新しく編み出される食品加工・保存に関わる科学技術は、食品産業を活性化するものである。 これら3つのサブテーマに関わる課題を募集する。 申請課題が複数のサブテーマにまたがる場合は、複数のサブテーマを選択することも可能とする。 |
助成金額 | 一般公募研究(120万円以下、計50件程度) ・理工学 25 件程度 ・医学 16 件程度 ・食品科学 9 件程度 プロジェクト研究 ・食品科学 5 件程度 100万円~200万円 |
問合わせ先 | 公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団 |
saltscience@saltscience.or.jp | |
URL | https://www.saltscience.or.jp/ |