
「こどもたちのかかわりの中で社会をみつめる こどもたちの声を聴くSDGs」若林 辰也氏(株式会社デルタスタジオ 代表取締役)
こどもたちのかかわりの中で社会をみつめる こどもたちの声を聴くSDGs
若林 辰也氏(株式会社デルタスタジオ 代表取締役)
ショッピングセンターの3階かららせん階段をのぼると株式会社デルタスタジオのオフィスがあります。社員数約20名。「弊社に関心があるこどもや若者が多い印象です。」と若林社長。㈱デルタスタジオが掲げているキャッチフレーズは「こどもに選ばれる会社になりたい」。その実現のためにどのような事業を展開されているのかをお聞きしました。
広告会社、こども、結婚支援…。

「弊社は2011年の創業で、14期中になりました。創業来、四日市の駅前のこのショッピングセンターの『この場所』に事務所を構えています。子どもや青少年に関わる事業を展開していますが、登記上は広告会社です。広告会社の強みを活かしながら、映像を作ったり、公設民営の児童館の運営をしています。四日市市には児童館が4か所あるのですが、公設民営は1か所だけ。年間約4万人の来館がある少し大きな児童館の運営をしています。四日市市こども子育て交流プラザと言います。橋北小学校の跡地に設置されました。児童館の機能と子育て支援機能を併せ持つ施設です。開館時から弊社が管理運営をしています。
このような事業を行っていると、地域の子育て支援団体などから広報や運営においてご相談を受ける機会が多く、例えば、昨年度まで10年間フリーペーパー「みえ子ども新聞」を制作・発行していました。みえの子ども応援プロジェクト「よっかいちステーション」事業も10年行いましたが、昨年度末で終了しました。三重県が2005年に策定した「子ども条例」の推進事業を受託し、多くの県民に「子ども条例」を知っていただくための「こども会議」を各地域で開催しました。
最近では、子ども関連の事業から少し離れて、県の「みえ出逢いサポートセンター」や市町が単独で行う結婚支援事業の委託を請け負うなどをしています。2016年には文部科学省の平成27年度青少年の体験活動推進企業表彰「奨励賞(中小企業部門)」を受賞しました。
子どもの育ちや子育て支援、青少年の育成や出逢い支援などライフステージに寄り添う事業などを実施してきました。弊社の社員は、教員免許をもっていたり、保育士や幼稚園の先生の資格をもつ人が多く、そういった経験を活かしてイベントの企画やケーブルテレビの子ども番組の企画、制作、撮影をしています。
「四日市こどもポータル」って?

最近の一番大きな取組みは、4月19日に開設した『四日市こどもポータル』(https://yokkaichi-kodomoportal.com/)です。2年ぐらい前からこういったものが必要ではないかと構想していたのですが、やっと公開にすることできました。要はホームページなのですが…。弊社も「四日市こどもと食堂」という子ども食堂を約6年前から行っていますが、始めた当初は一桁いかないくらいの数だったのですが、今では四日市市には30ほどの子ども食堂があります。かなり増えました。行政の補助が充実しているので、「子ども食堂をやってみたい」という方には始めやすい環境になりました。しかし、やはり公の補助金なので年々補助率が下がっていくことがみえています。補助率が下がったら続けていくことが難しいという方々が多くいらっしゃる。なんとか補助率が下がった部分を物やお金という形で支援をしなければいけない。そうでなければ、つづけることのできる団体が減ってしまうのではないかと感じていました。子ども食堂は必要です。利用される方の声から痛感しています。しかし、お金も物も不足してくる。
あともう一つの課題は子ども食堂の横のつながりがないということです。利用者の目線から見た時に、いつどこで行われているかがわからない、という状況です。
この2つの課題をなんとかしたいと立ち上げたのが『四日市こどもポータル』です。子ども食堂の情報をこのポータルで整理し、利用される方が利用しやすくなる環境を整えました。
このサイトは企業協賛によって運営されています。そのほとんどが四日市の企業です。バナー広告を出していただいています。地元のために少しでもできる範囲でできることがあればしたいという、地元に根を張っている中小企業がたくさんあります。こういった企業のバナー広告を増やしていきたい。
こどもたちが選ぶ会社って?
「そもそも子どもたちは自分が暮らす町にどんな会社があるのか知らないです。その状況のなかで子どもに選ばれるというよりは、子どもたちが「あの会社、おもしろい」と言ってくれるような会社をつくりたいという思いがあります。親が連れていくのではなくて、子どもが自分の言葉で「あの会社の活動に行ってみたい」と言ってくれるように子どもたちに近づきたいんです。
社名の由来なのですが、デルタは「三角形」、「ひと」と「まち」と「企業」の三角形をイメージして名付けました。四日市も人口が減少しています。僕自身子どもの頃は、地元にどんな会社があるのかも知らない、関わったことがない、親が企業のイベントに連れていく程度でした。自分たちのことをちゃんと考えて、自分たちの味方になってくれて、考えてくれる面白い会社が地元にあってもいいのではないかと思いました。子どもたちが自分たちのことを見ててくれる、考えてくれる、一丁目一番地に自分たちのことを大事にしてくれる会社があってもいいのではないかと思っていました。
子どもたちが経済力や親の意思決定に関係なく、「自分の力でしたいことができる、見たい景色が見れる環境を作りたい」と思っていたことがこの会社をつくる原点かもしれません。」
子どもの「小さな声」を大切にしたい…。
いろいろな仕事の依頼がきます。広告代理店でもあるので、映像をつくってほしい、ホームページをつくってほしいなど。マーケティング的な仕事の依頼もあります。こんなことしたいけれどどのように組み立てていいのか相談にのってほしいといった相談も多いです。行政からの相談もいくつかいただいています。
大事だと思うこと、子どもと接する中で難しいなと思うこともたくさんあります。子ども会議のサポートや、児童館を運営していると大きな声の子ども、小さな声の子どもがいます。子どもたちの様々な声を聞いて、どう折り合いをつけていくかがむずかしい。子どもたちとのやりとりをたくさんするのですが、小さい子ども、小さな声の子どもの声を自然に拾う、聴くことがとても大切な一番のポイントだと思っています。どのこどもの声も、みんなの声を大切にじっくり聞いて運営をする。子どもたちと一緒に考えながらていねいに関わっていきたいと思っています。」
