「働きづらさを感じている人の、商店街のしごと」有限会社水谷仏具店

「働きづらさを感じている人の、商店街のしごと」
有限会社水谷仏具店

■映画会、抽選会のおしごと

今から4,5年前、月1回の映画の鑑賞会をしていました。50名程の人が入るホールが商店街にあり、たまたま小津安二郎の100周年で県の図書館から無料で借ることができたために、映画鑑賞会を開催しました。その頃は松竹の映画が多かったかな。黒澤明監督の映画の上映もしました。その時にご近所の市民社会研究所を通じて、北勢地域若者サポートステーション(サポステ)の7名くらいのメンバーに、受付や椅子並べや会場設営、片づけのお手伝いしていただきました。お礼は打ち上げの時のご飯だったかな。
商店街の抽選会の手伝いもしてもらいました。4年くらい前でしょうか。『えびす市』という売り出しイベントをしていて、月の始めの4の日に、お買い上げに応じて抽選券を渡し抽選会を行っていたんです。サポステのメンバーには『がらがら抽選機』を回してもらっていましたね。抽選会のほとんどを4~5名のサポステのメンバーに任せていました。今は映画会も抽選会もしていませんが、その頃手伝いをしてくれたメンバーがたまに遊びに来てくれます。

■商店街のおそうじへ…。

昨年度、私は市民社会研究所の「つながりの仕事おこし」事業の「仕事おこし人」となり、その関係でユニバーサル就労センター(以下ユニバ)から、就労支援で通っている障害がある人に商店街でお手伝いする場をつくってもらえないか、という相談がありました。そこで、10月から毎週火曜日の午前10時から、商店街の通りをモップ清掃してもらうことにしました。以前は私が毎朝、モップで通りを拭いていました。この商店街でモップ清掃をする人は2~3名で、他の人は自分の店の前でさえ掃除をしない。無関心というか、汚れていても気にしていない。そういう人たちが少しでも気づいてくれたら、とやっていました。

そんな時にユニバから声をかけていただきました。ただ、最近私が不在でユニバのメンバーと話すことがあまりないんです。他の店舗の人とも話をしている様子もなく。先月始めたばかりなので、これから商店街の人たちとコミュニケ―ションをとれるようにしたいと思っています。

■お互いを見る、知る、優しくなれる…。

サポステやユニバの若者たちとの普段の接触はほとんどありません。顔を合わせてもうつむいてあんまり喋らないかな。でもみんなとてもかわいらしい。顔見知りになり中身を知るとね。
サポステやユニバのメンバーを受入れることは、商店街でできることの一つだと思うんです。メンバーが生活している商店街の中でこそ、何かやれることがある。商店街にはそのような場があるのではないかと思います。もっと温かい目でみなさんが見てくれるといいのですが。みなさん、自分のこと、自分のお店のことで精一杯で、他の人のことは知らない、という考え方の人もいるとは思います。でも、商店街にはいろいろな人がいる、働きたいけれど一歩が踏み出せない人、こもってしまう人、がいます。けれど、そういう人が何かを頼って町に出てきているわけです。だからこそ、応えないといけないと思うんです。それが町、商店街にできることの一つだと思います。

ユニバ、サポステのメンバーはここの生まれやここの育ちではないけれど、「何で自分がここの掃除をするんだろう」と思いながらこの町やこの商店街の価値を感じ取ってくれてたらいいなと思います。そのためにも、少しずつでも話しかける機会を作っていかなければいけないと思っています。ユニバやサポステのメンバーは「人の温かさでお掃除をやらせてもらえるんだろう」と思い、商店街の人たちは「何でサポステの人がここで掃除してるの?」というところから、サポステの人たちやその暮らしを理解してもらえたらいいなと思います。少し背中を押してほしい、という気持ちだと思うんです。
市民社会研究所が昨年度から、企業や地域と就労困難な人をつなぐ「仕事おこし事業」をしていますが、受け入れる企業側の理解がないと難しいと思います。言ったことをしない、指示通りに動かないという不満が出たりする。でも、企業側にも温かい気持ちが必要です。理解をすることは必要です。そのことが企業のためにもなります。結局は自分のためだと思います。困難を抱える人を優しく見れるようになる。お掃除を通して周りの人が変わっていったらいいなと思います。時間はかかるでしょう。けれど、社会には地域にはいろんな人がいることを知ることが社会を理解する学びにつながります。

■広い心、温かい心をもつ商店街に…

水谷 武生さん

私も年齢が年齢ですから何か新しいことをするのが億劫になってきました。でも、映画会のように、みんなが集まって、お年寄りもサポステのメンバーもみんなが混ざって楽しくできるような場があればいいなと思っています。みんなが理解し合えるような、交流が生まれるような場があるとよいです。ちょっとした話ができる場がほしいです。
ユニバ、サポステのメンバーがうつ向いて歩くのではなく、この商店街だったら少し顔をあげて歩くことができる。そんな安心して過ごせる商店街になったらいいなと思います。でもまだまだ難しい。商店街にもいろいろな人がいます。そこまで理解をしてくれる人がどれだけいるのか。みなさん、自分の商売で手一杯です。でも、広い心で、温かい心で受け入れることができることが、衰退しつつある商店街の魅力の一つだと思うんです。三丁目の夕日…のように。

■商店街の今と未来

映画会は四日市諏訪商店街振興組合が、抽選会は表参道スワマエ商店街が行っていました。近鉄四日市駅前には3つの振興組合と8つの商店街発展会があります。これら全部の商店街を「四日市駅前商店街」と言い、四日市の中心市街地です。
私の店は明治18年創業です。「表参道スワマエ」にあり、この商店街は20店舗になってしまいました。私はこの商店街で生まれて育ちました。商店街の通りは旧東海道で、まっすぐに行くと「追分」につき、伊勢への道と京都への道に分かれます。明治になってこの東海道沿いに小さい店や職人が並ぶようになった。その名残で今も店があります。閉めてしまった店や新しい人が経営をしている店もあります。老舗は少なくなりました。商店街の存続も厳しい。つくづくこの通りを見ていると貸したくないという人がシャッターを閉めているという状況です。どうしたもんだろう。商店街は厳しいです。

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