「クルマから卵・トマトまで~人とモノをつなぐ」株式会社フジ技研

「クルマから卵・トマトまで~人とモノをつなぐ」 
株式会社フジ技研

株式会社フジ技研の工場の前にある「FUJIHUB」。何をしているところなんだろう?と中に入るとすぐに卵が販売されていました。フジ技研と卵?どう結びついたんだろう?株式会社フジ技研取締役常務 鏡谷有紀さんにお話しを伺いました。

■クルマの部品をつくる

弊社は自動車の開発支援会社で、今から発売される車の部品を製造している会社です。今年36年目に入り、元々四日市で創業しました。その後菰野に引っ越し、その後、いなべにも工場を増設しました。引っ越しの理由は手狭になったこと。工場の場所がないと事業を拡大することが難しい。引っ越ししてまだ10年経っていないのですが、工場を広げることができました。
特に自社が得意としているものは、ワンオーダー品というか、新しく車を作るときに使うものを開発することが得意です。鉄製品では自社には多分作れないものはないと思っています。鉄製品は得意です。

鏡谷 有紀さん

 父がそういった部品会社を作ろうと創業しました。35年前です。これから車の部品のニーズが高まり開発が進むと先駆けて事業を起こしました。技術がなくても3Dの世界であれば可能です。一貫制作をしているので基本的に1から10まで全て自社工場内で行っています。国内メーカー全てお取引があります。こんな車をつくるのでこのような製品が欲しいデータを頂くと、『作ります』という感じです。正直すごく最先端のものを作らせていただいているのですごくいい仕事だと思っています。実際は車の部品だけではなく、依頼があれば素材が鉄であれば何でも作ります。

■地域に賑わいを「フジハブ」

三重県は県外からの移住者が多いんです。特にいなべ市は県内移住第1位です。自然があり、食べるものがおいしく、愛知からもそれほど遠くない。魅力ある土地です。いなべにはカフェがとても多くなり、若者が多く訪れます。フジハブの意味は、「フジがつなぐ」です。ハブは車用語で繋ぐ「つなぎこむ」、人と人、人とモノ、モノとモノを繋いでいく、という意味でつけました。「フジハブ」をつくるときに、㈱フジ技研って何の会社?とよく聞かれることがありました。そこで、「フジハブ」を会社の広報ツールにしようと考えました。
また、㈱フジ技研の3代目社長は実はすでに決定しています。次世代につなぐときに、「お金を儲ける」という価値観だけでなく、次の世代に誇りになることを残したいと「地域に根差した会社にしたい」という思いを込めて「フジハブ」をつくりました。地元に愛される会社になることをベースにしています。

また、最近の若い世代が「モノづくり」に対しての関心がとても低いことも「フジハブ」をつくった理由です。「モノづくり」に興味もなければ、経験もない。でもゲームはしているので感覚は鋭い。ただ、立体の物を作ろうとすると作れないんです。そのことを知った時に日本の教育の原点を見直すことの必要性を感じました。そしてドイツに行き、マイスター制度を知りその現場を見てきました。日本のモノづくりの衰退の原因に気づきました。

「フジハブ」を子どもたちのモノづくりへの感性を育てる場所にしたいと思いました。しかし、なかなか会社の理解を得ることができず、飲食をしようということになりました。ごはんを食べに来たお客さんが「モノづくり」の体験もしてくれるかなと。会社の認知度もあがりますし…。その時に地元の卵屋さんが廃業するという話が入ってきて、その卵屋さんを何とか残したいとフジハブで卵を使うことにしました。「いっちゃんたまご」です。次はトマト。三重で若い方がトマトの生産をされている方がいると紹介頂き、会いに行き熱い話を聞いたとたん、即断即決でやってみたいと思いました。
トマトも卵も、料理に対して「モノづくり」という感覚がなかったのですが、全てつくるという行動でいえば「モノづくり」でした。原点は一緒だと気づきました。

■地域に愛される場所「フジハブ」

フジハブはイベント開催時に無料で貸し出しています。当社は月1回のイベントのみで、あとは地域の団体に貸しています。特にルールがないので、チャレンジしたい人や、新しいことを何かしたいという人たちに使っていただいています。先日は保護犬団体のイベントや保護猫団体の譲渡会、赤ちゃんとママのイベントなどいろいろな団体が来てくれています。

■フジ技研のSDGs

SDGsのセミナーに行った時に最初なにこれ?なぜこんなことをするのか?という感じでした。でも実際に内容を読んでいけばいくほど必要なことが書いてある。理解しながら読み込んでいった。これはこれかなと目標と自社の活動を重ねながら一つずつはめ込んでいった。SDGsに取り組むというより、いろんなことに取組んだらSDGsにつながっていたという感じです。
循環型企業にしていきたいという思いがSDGsにつながっていました。卵を産んだあとの親鳥を廃棄するのではなく、費用はかかりますが、親鳥の肉を加工業者に出して全ていただいています。メニューのオムライスやキーマライス、タコライス、トマトカレーに使っています。鳥の炭焼きにして提供しています。割れた卵を利用してつくったマヨネーズもあります。社員食堂では野菜は基本地元産、油は桑名のこめ油を使っています。添加物も使っていません。
社員の食育にも取り組み。1食170円ですよ。地域の子ども食堂に卵の寄付などしています。

■今考えていること…経営者、女性、子ども

フジハブを建ててちょうど1年半経ちますが、今まで見えていなかった世界が見えるようになり、気づくと楽しいです。知り合いがとても増えました。新しいことをやってみたいと思っています。女性がもっと活躍できる仕事づくり。三重県の男性と女性の年収の差も気になっています。男性と女性が同等な社会をつくりたい。不登校の子どもが多くなっていることも気になっています。要因は一つではないと思います。いろいろな問題が子どもに負荷としてかかっているんだろうと。学校に行けなくなり、社会に出られなくなる。子どもも親も不安になってしまう。なんとかしたいです。
10年をかけて社員の福利厚生や働き方改革をしました。社内の環境が整ってこそ新しいことにチャレンジできます。健康促進のためにフィットネスジムを作ったり、お金や保険、育休の学習会をしたり、社員が社会で暮らすなかで大切なことを学ぶ機会を年間150本ほど行っています。

■取材を終えて。

「ヒラメキで新しい事をやっています、やりたいなと思うと叶えてくれる社員がいるから考える事も出来ます…。でもまだ始まったばかりという感じです。」と話す鏡谷さん。鏡谷さんの地域と会社への思い、アイデア、「新しさ」がプラスされて、「フジハブ」がいきいきと地域に存在しているように感じました。地域と会社、地域の卵、トマト、野菜、子ども、人々のつながりを育むモノづくりの場「フジハブ」。今後の展開がとても楽しみです。

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